知力・体力・判断力で勝負するといわれるスポーツクライミングの世界。ソールのお話の前にその魅力を伺いました。
瞬発力、筋力だけではなく、正確性が鍵となる「スピード」、さらには課題ごとに登るための順序や構成、体の使い方を考えて登る「ボルダー」と「リード」。まさに知力、体力、判断力を武器に闘う競技、スポーツクライミング。クライミングとは何か?そして、誰でも楽しめる観戦の見どころを教えてもらいました。
野口啓代さん(以下「野口」と略)
シューズに関してはお話をしたことはありますが、ソールに関してのインタビューは初めてです。ちゃんとお答えできるか、緊張しますね。
−−難しいことをお伺いするつもりはないのですが、スポーツクライミングにとってのシューズの重要性などは少し専門的なお話が伺えればと思います。
野口
考えながら、実体験でしか話せませんが、よろしくお願い申し上げます。
−−よろしくお願い申し上げます。では早速、質問させていただきます。スポーツクライミングの見どころなどを含めてお話いただけますか?
野口
シューズが手元にあったほうが良いですね?(といってシューズをふくろから出してくださった)
−−こんなに履き込むものなのですね。新品のものに比べて差がすごいですね。
野口
使い込んでいるのを持ってきました(笑)。競技としてのスポーツクライミングはみなさんがイメージされている自然の岩を登るというものではありません。人工壁で行われる競技としてのクライミングをスポーツクライミングといいます。今現在の公式種目は3つあります。スピード、ボルダー、リードの3つの種目。私は東京2020オリンピックのためにこの3つの種目をやっていましたが、それまではボルダーとリードの2種目をやってきました。次の2024年のパリ2024オリンピックではフォーマットが変わりました。ひとりの選手が3種目やるのではなく、2種目と1種目になりました。スピードの単種目とリードとボルダーの2種目複合に分かれてメダルをかけて争うようになりました。
−−得意な種目などでも勝敗が変わってくるものですね。私たちはどこに注目して観ると良いのでしょうか?
野口
スピードクライミングはその名の通りスピードを競います。15mの課題をスタートからゴールまでを何秒で行けるか、というシンプルなものです。スピードだけは常にホールド(人工の壁を登るときの手がかり、足がかりになる突起物のこと)の配置や、壁の形状が決まっています。普段練習しているものとまったく同じものを大会で行ないます。陸上競技みたいな感じですね。スピードは瞬発力であったり、筋力が必要な種目になります。ボルダーとリードは大会のときに初めて見る壁と初めて見るホールド配置のものを、ボルダーならひとつの課題あたり4分間、リードだったらひとつの課題あたり6分間で下から上までどこまでいけるかという競技です。難易度を競います。
−−競技のスタイルを含めてかなり違ったものに感じますね。スピードは普段からの練習の成果が大会で出るという感じなのでしょうか?
野口
そうですね。自分の持ちタイムであったり、ベストタイムであったりを大会で発揮できるか、というものになります。
−−ボルダーとリードの違いはどんなところなのでしょうか?
野口
ボルダーは高さ4から5mの壁です。下にマットが敷いてある状態で壁を生身で登ります。リードクライミングの場合は15mから18mくらいの高い壁にハーネスを着けてロープを使って、下にはビレイヤーというサポートする人がいます。
−−スピードとは違って、自己研鑽だけではない気がします。
野口
ボルダーとリードは本当にたくさんの練習をして、どんな課題であっても勝てるように準備しています。いろんな壁の傾斜であったり、いろんなホールドの配置を仮定しながら練習していますね。
−−大会当日にならないとわからないものとなると、その日の壁は苦手とか、これは好きな感じだ、ということはあるのでしょうか?
野口
ありますね。課題相性というのはどこまで強くなってもあるので、相手の選手と競うものではありますが、それ以上に自分がその日の課題を登らないといけないというのが先にきますね。ライバルと闘うというよりも目の前の課題をどう克服してクリアするか、なのです。対人勝負というよりは課題との勝負であり、自分自身との勝負という要素が大きいですね。ボルダーとリードは前の選手の動きを見られません。自分の出番まで選手は隔離されているので、自分で考えて自分で登らないといけないのです。
−−スピード競技も自分のタイムとの闘いですし、かなり精神的にはストイックな競技ですね。
野口
ただ、スピード競技の場合、決勝戦はトーナメント方式になって、基本的に16人で決勝を行なうのですが、1位と16位の選手、2位と15位の選手という具合に競い合うので、スピードのほうが対人競技の要素はあります。
−−車でいうと「ドラッグレース」みたいなものですね。ボルダーやリードで今日の課題はとても楽だった! ということはあるのでしょうか?
野口
楽だったということはありませんね、トップクラスが競い合うものなので、難易度はもちろん高い。ですが、今日の課題との相性が良くて得意な感じだったということはありますし、自分の調子が良くて、苦手な課題がとても簡単に感じた、ということはありますね。
まずはスポーツクライミングという競技と面白さ、見どころ、魅力を伺いました。一度お話を伺うとスポーツクライミングの見方も変わると思います。
野口啓代さん(以下「野口」と略)
シューズに関してはお話をしたことはありますが、ソールに関してのインタビューは初めてです。ちゃんとお答えできるか、緊張しますね。
−−難しいことをお伺いするつもりはないのですが、スポーツクライミングにとってのシューズの重要性などは少し専門的なお話が伺えればと思います。
野口
考えながら、実体験でしか話せませんが、よろしくお願い申し上げます。
−−よろしくお願い申し上げます。では早速、質問させていただきます。スポーツクライミングの見どころなどを含めてお話いただけますか?
野口
シューズが手元にあったほうが良いですね?(といってシューズをふくろから出してくださった)
−−こんなに履き込むものなのですね。新品のものに比べて差がすごいですね。
野口
使い込んでいるのを持ってきました(笑)。競技としてのスポーツクライミングはみなさんがイメージされている自然の岩を登るというものではありません。人工壁で行われる競技としてのクライミングをスポーツクライミングといいます。今現在の公式種目は3つあります。スピード、ボルダー、リードの3つの種目。私は東京2020オリンピックのためにこの3つの種目をやっていましたが、それまではボルダーとリードの2種目をやってきました。次の2024年のパリ2024オリンピックではフォーマットが変わりました。ひとりの選手が3種目やるのではなく、2種目と1種目になりました。スピードの単種目とリードとボルダーの2種目複合に分かれてメダルをかけて争うようになりました。
−−得意な種目などでも勝敗が変わってくるものですね。私たちはどこに注目して観ると良いのでしょうか?
野口
スピードクライミングはその名の通りスピードを競います。15mの課題をスタートからゴールまでを何秒で行けるか、というシンプルなものです。スピードだけは常にホールド(人工の壁を登るときの手がかり、足がかりになる突起物のこと)の配置や、壁の形状が決まっています。普段練習しているものとまったく同じものを大会で行ないます。陸上競技みたいな感じですね。スピードは瞬発力であったり、筋力が必要な種目になります。ボルダーとリードは大会のときに初めて見る壁と初めて見るホールド配置のものを、ボルダーならひとつの課題あたり4分間、リードだったらひとつの課題あたり6分間で下から上までどこまでいけるかという競技です。難易度を競います。
−−競技のスタイルを含めてかなり違ったものに感じますね。スピードは普段からの練習の成果が大会で出るという感じなのでしょうか?
野口
そうですね。自分の持ちタイムであったり、ベストタイムであったりを大会で発揮できるか、というものになります。
−−ボルダーとリードの違いはどんなところなのでしょうか?
野口
ボルダーは高さ4から5mの壁です。下にマットが敷いてある状態で壁を生身で登ります。リードクライミングの場合は15mから18mくらいの高い壁にハーネスを着けてロープを使って、下にはビレイヤーというサポートする人がいます。
−−スピードとは違って、自己研鑽だけではない気がします。
野口
ボルダーとリードは本当にたくさんの練習をして、どんな課題であっても勝てるように準備しています。いろんな壁の傾斜であったり、いろんなホールドの配置を仮定しながら練習していますね。
−−大会当日にならないとわからないものとなると、その日の壁は苦手とか、これは好きな感じだ、ということはあるのでしょうか?
野口
ありますね。課題相性というのはどこまで強くなってもあるので、相手の選手と競うものではありますが、それ以上に自分がその日の課題を登らないといけないというのが先にきますね。ライバルと闘うというよりも目の前の課題をどう克服してクリアするか、なのです。対人勝負というよりは課題との勝負であり、自分自身との勝負という要素が大きいですね。ボルダーとリードは前の選手の動きを見られません。自分の出番まで選手は隔離されているので、自分で考えて自分で登らないといけないのです。
−−スピード競技も自分のタイムとの闘いですし、かなり精神的にはストイックな競技ですね。
野口
ただ、スピード競技の場合、決勝戦はトーナメント方式になって、基本的に16人で決勝を行なうのですが、1位と16位の選手、2位と15位の選手という具合に競い合うので、スピードのほうが対人競技の要素はあります。
−−車でいうと「ドラッグレース」みたいなものですね。ボルダーやリードで今日の課題はとても楽だった! ということはあるのでしょうか?
野口
楽だったということはありませんね、トップクラスが競い合うものなので、難易度はもちろん高い。ですが、今日の課題との相性が良くて得意な感じだったということはありますし、自分の調子が良くて、苦手な課題がとても簡単に感じた、ということはありますね。
まずはスポーツクライミングという競技と面白さ、見どころ、魅力を伺いました。一度お話を伺うとスポーツクライミングの見方も変わると思います。
スポーツクライミングにとって、 シューズの果たす役割は一番大切な道具。 アッパー、そしてヴィブラムのソールの感触を伺いました。
スポーツクライマーにとって、競技に重要なギアは「チョーク」と「シューズ」しかありません。その中でもシューズの役割は重要です。大会ではどんな課題が出てくるのか分からないので、結果的にほとんどの選手が同じオールラウンド対応のシューズを履くという現状を伺いました。
−−前編ではスポーツクライミングの魅力と見どころを伺いました。ここからが本番で、スポーツクライミングにとってのシューズとソールについて伺いたいと思います。まずは単刀直入に、スポーツクライミングにとって、シューズ、そしてソールはどのような重要な位置付けになりますか?
野口啓代さん(以下「野口」と略) スポーツクライミングの選手にとって、誰もがそう思っていると思うのですが、シューズは一番大切な道具だと思います。基本的にクライミングをする上でギアの性能で自分のパフォーマンスが変わるものはシューズとチョークしかありません。
−−チョークとはあの粉ですか?
野口 手につける炭酸マグネシウムの粉のことです。とシューズだけが選べるものです。もちろん、ハーネスとかロープ、ウエアも自分で選ぶことはできますが、それで登るときのパフォーマンスに影響はほとんどないと思います。ですから、シューズとチョークはとても重要です。
−−チョークはそれぞれの選手が配合を変えることができるのですね?
野口 オリジナルのものを使う選手もいますし、いくつかのチョークを自分でブレンドして使う選手もいます。ですが、チョークの種類もすごくたくさんあるので、本当に自分に合うものを選ぶのは大事ですね。最近では大会によく出てくるホールド(人工の壁を登るときの手がかり、足がかりになる突起物のこと)と相性の良いチョークを配合したものがあるので、トップ選手はみんな同じチョークを使うことになりますね。
−−結果的に同じものを使うことになるわけですね。
野口 そうですね。シューズのほうが足型であったり、レディースかメンズかもありますし、選べるのですが、トップの選手はシューズも同じになりますね。それは最近の課題のトレンドに合うシューズを選んでいくと行き着く先は同じになってしまいますね。
−−課題にもトレンドがあるのですね。
野口 シューズでもつま先がすごく重要なシューズとベタッと面で踏めるようなシューズと踵の部分、ヒールをすごく重視しているか、つま先の甲の部分が使えるか、といった差はあります。ただ、トップ選手のほとんどが同じシューズを履いていると思います。
−−それは驚きです。
野口 少し前だったら、シューズの性能が高くなかったので、自分でカスタマイズしてシューズ改造する人もいたのですが、シューズの性能が高くなり、今ではほとんどの選手がオリジナルのシューズのまま使っていますね。
−−選手たちもそれぞれが使いやすさも違い、シューズを選んだり、自分用に手を加えるものだと勝手に想像していました。
野口 私もよく、オリジナルモデルなのですか?とかプロ用なのですか?と聞かれますが、私はクライミングを始めたときからシューズを改造したことはありません。シューズメーカーのオリジナルのものを使っていますね。
シューズを手に持ちながら、丁寧に解説していただいた。
−−それもまたびっくりです。メーカーと一緒にシューズ開発をすることはあるのですか?
野口 開発している選手もいますが、私の履いている「LA SPORTIVA(以下「スポルティバ」)」はとにかく完成度が高い。逆に改造しないほうが良いですね。ゴムがすり減ってしまい、リソールに出したり、色々カスタマイズしようかな、と思った時期もありましたが、結局オリジナルのほうが良かったですね。手を加えない製品のほうが良かったので、そのまま履いています。
−−初めてクライミングシューズを履いたときの印象について伺えますか?
野口 初めてのクライミングシューズは現在とは違うブランドでした。小学校5年生でクライミングを始めたのですが、その当時、自分に合うサイズのシューズはほとんどありません。今は小学校1年、2年からクライミングを始める時代なので、キッズ用のシューズも出ていて、私が履いているシューズの小さいものがあります。ですが、当時は選択肢がなくて、2つか3つですかね、その中でサイズの合う足形の合う痛くないシューズを選んだのを覚えています。
−−大変ですよね、世間より早く始めるということは。
野口 本当に子どもでクライミングを始める人は少なかったので、シューズの需要もなかったのだと思います。
−−初めて履いたときから現在までに、クライミングシューズもいろいろに進化もあり、種類も増えてきたと思いますが、アウトソールの粘りや硬度などの違いを意識したことはありますか?
野口 最初は「FIVE TENアナサジベルクロ」から始めて、その後「マッドロック」のシューズを履いていて、18歳のとき初めて履いた「スポルティバ」は、今はない「バラクーダ」でした。最初に履いたときはソールもそうですし、シューズの性能の高さにびっくりしましたね。他社に比べて、足型が素晴らしいと言われていました。履いた瞬間に全く脱げもしないし、ずれないし、他のシューズが履けないな、と思いました。
−−そこまでフィット感が良いと普段履きの靴にも影響しそうですね。
野口 そこは全然別ですね。クライミングシューズはどうしてもちょっと小さいサイズを履くので、普段はきつい靴は履きたくないと思っています(笑)。緩めで履いてしまいますね。1日6時間とか8時間とかクライミングシューズを履いていると足が疲れたり、タコができたりするので、きつい靴は履きたくないです(笑)。
撮影やイベント時によく履いているTHE NORTH FACEのシューズに比べても大きさの違いは一目瞭然。
−−シューズを出していただいたときから思ったのですが、本当に小さいですよね。
野口 普段の靴より、かなり小さいですね。普段の靴が伸ばして履くのに対して、クライミングシューズは足の親指を握っている状態で履いています。ただ、今は小さいものにいかに乗れるか、という課題のスタイルよりも、大きなホールドの上を、それこそ走ってクリアすることも多くなりました。そのため、先端部分だけではなく、踵側も使うこともあり、ソール全体を使うことが多くなっています。つま先も踵側も全部使える万能なオールラウンダーなシューズであり、私はこの靴一足でボルダーもリードも登っています。
−−スポルティバのシューズを履いていらっしゃいますが、何種類かのアウトソールを使い分けていると思います。そのゴムの役割は考えていらっしゃいますか?
野口 シューズ自体が良いものを履いています。私は貼り替えたりもしないので、そのシューズについているソールのゴムで履いていますね。今までスポルティバのシューズでそこにヴィブラムのソールは当たり前についています。そのソールで足が滑るな、とか乗れないな、ということを感じたことはないですね。だから、今までソールを変えようとか、違うシューズやソールを試そうとか、考えたことはありません。つまり、ソールを単独で意識する必要がないくらいヴィブラムのソールの性能は間違いないものだと思いますし、それに頼っているということだと思います。
野口啓代(のぐち あきよ)
プロフリークライマー 小学5年生の時に家族旅行先のグアムでフリークライミングに出会う。クライミングを初めてわずか1年で全日本ユースを制覇、その後数々の国内外の大会で輝かしい成績を残し、2008年には日本人としてボルダー ワールドカップで初優勝、翌2009年には年間総合優勝、その快挙を2010年、2014年、2015年と4度獲得し、ワールドカップ優勝も通算21勝を数える。 2018年にはコンバインドジャパンカップ、アジア競技大会で金メダル。2019年世界選手権で2位。自身の集大成、そして競技人生の最後の舞台となった東京2020大会では銅メダルを獲得。 2022年5月、自身の活動基盤となるAkiyo's Companyを設立。 今後は自身の経験をもとにクライミングの普及に尽力し、また「Mind Control」(8c+)、「The Mandara」(V12)を凌駕するような外岩の活動も積極的に行う。
スポーツクライマーにとって、競技に重要なギアは「チョーク」と「シューズ」しかありません。その中でもシューズの役割は重要です。大会ではどんな課題が出てくるのか分からないので、結果的にほとんどの選手が同じオールラウンド対応のシューズを履くという現状を伺いました。
−−前編ではスポーツクライミングの魅力と見どころを伺いました。ここからが本番で、スポーツクライミングにとってのシューズとソールについて伺いたいと思います。まずは単刀直入に、スポーツクライミングにとって、シューズ、そしてソールはどのような重要な位置付けになりますか?
野口啓代さん(以下「野口」と略) スポーツクライミングの選手にとって、誰もがそう思っていると思うのですが、シューズは一番大切な道具だと思います。基本的にクライミングをする上でギアの性能で自分のパフォーマンスが変わるものはシューズとチョークしかありません。
−−チョークとはあの粉ですか?
野口 手につける炭酸マグネシウムの粉のことです。とシューズだけが選べるものです。もちろん、ハーネスとかロープ、ウエアも自分で選ぶことはできますが、それで登るときのパフォーマンスに影響はほとんどないと思います。ですから、シューズとチョークはとても重要です。
−−チョークはそれぞれの選手が配合を変えることができるのですね?
野口 オリジナルのものを使う選手もいますし、いくつかのチョークを自分でブレンドして使う選手もいます。ですが、チョークの種類もすごくたくさんあるので、本当に自分に合うものを選ぶのは大事ですね。最近では大会によく出てくるホールド(人工の壁を登るときの手がかり、足がかりになる突起物のこと)と相性の良いチョークを配合したものがあるので、トップ選手はみんな同じチョークを使うことになりますね。
−−結果的に同じものを使うことになるわけですね。
野口 そうですね。シューズのほうが足型であったり、レディースかメンズかもありますし、選べるのですが、トップの選手はシューズも同じになりますね。それは最近の課題のトレンドに合うシューズを選んでいくと行き着く先は同じになってしまいますね。
−−課題にもトレンドがあるのですね。
野口 シューズでもつま先がすごく重要なシューズとベタッと面で踏めるようなシューズと踵の部分、ヒールをすごく重視しているか、つま先の甲の部分が使えるか、といった差はあります。ただ、トップ選手のほとんどが同じシューズを履いていると思います。
−−それは驚きです。
野口 少し前だったら、シューズの性能が高くなかったので、自分でカスタマイズしてシューズ改造する人もいたのですが、シューズの性能が高くなり、今ではほとんどの選手がオリジナルのシューズのまま使っていますね。
−−選手たちもそれぞれが使いやすさも違い、シューズを選んだり、自分用に手を加えるものだと勝手に想像していました。
野口 私もよく、オリジナルモデルなのですか?とかプロ用なのですか?と聞かれますが、私はクライミングを始めたときからシューズを改造したことはありません。シューズメーカーのオリジナルのものを使っていますね。
シューズを手に持ちながら、丁寧に解説していただいた。
−−それもまたびっくりです。メーカーと一緒にシューズ開発をすることはあるのですか?
野口 開発している選手もいますが、私の履いている「LA SPORTIVA(以下「スポルティバ」)」はとにかく完成度が高い。逆に改造しないほうが良いですね。ゴムがすり減ってしまい、リソールに出したり、色々カスタマイズしようかな、と思った時期もありましたが、結局オリジナルのほうが良かったですね。手を加えない製品のほうが良かったので、そのまま履いています。
−−初めてクライミングシューズを履いたときの印象について伺えますか?
野口 初めてのクライミングシューズは現在とは違うブランドでした。小学校5年生でクライミングを始めたのですが、その当時、自分に合うサイズのシューズはほとんどありません。今は小学校1年、2年からクライミングを始める時代なので、キッズ用のシューズも出ていて、私が履いているシューズの小さいものがあります。ですが、当時は選択肢がなくて、2つか3つですかね、その中でサイズの合う足形の合う痛くないシューズを選んだのを覚えています。
−−大変ですよね、世間より早く始めるということは。
野口 本当に子どもでクライミングを始める人は少なかったので、シューズの需要もなかったのだと思います。
−−初めて履いたときから現在までに、クライミングシューズもいろいろに進化もあり、種類も増えてきたと思いますが、アウトソールの粘りや硬度などの違いを意識したことはありますか?
野口 最初は「FIVE TENアナサジベルクロ」から始めて、その後「マッドロック」のシューズを履いていて、18歳のとき初めて履いた「スポルティバ」は、今はない「バラクーダ」でした。最初に履いたときはソールもそうですし、シューズの性能の高さにびっくりしましたね。他社に比べて、足型が素晴らしいと言われていました。履いた瞬間に全く脱げもしないし、ずれないし、他のシューズが履けないな、と思いました。
−−そこまでフィット感が良いと普段履きの靴にも影響しそうですね。
野口 そこは全然別ですね。クライミングシューズはどうしてもちょっと小さいサイズを履くので、普段はきつい靴は履きたくないと思っています(笑)。緩めで履いてしまいますね。1日6時間とか8時間とかクライミングシューズを履いていると足が疲れたり、タコができたりするので、きつい靴は履きたくないです(笑)。
撮影やイベント時によく履いているTHE NORTH FACEのシューズに比べても大きさの違いは一目瞭然。
−−シューズを出していただいたときから思ったのですが、本当に小さいですよね。
野口 普段の靴より、かなり小さいですね。普段の靴が伸ばして履くのに対して、クライミングシューズは足の親指を握っている状態で履いています。ただ、今は小さいものにいかに乗れるか、という課題のスタイルよりも、大きなホールドの上を、それこそ走ってクリアすることも多くなりました。そのため、先端部分だけではなく、踵側も使うこともあり、ソール全体を使うことが多くなっています。つま先も踵側も全部使える万能なオールラウンダーなシューズであり、私はこの靴一足でボルダーもリードも登っています。
−−スポルティバのシューズを履いていらっしゃいますが、何種類かのアウトソールを使い分けていると思います。そのゴムの役割は考えていらっしゃいますか?
野口 シューズ自体が良いものを履いています。私は貼り替えたりもしないので、そのシューズについているソールのゴムで履いていますね。今までスポルティバのシューズでそこにヴィブラムのソールは当たり前についています。そのソールで足が滑るな、とか乗れないな、ということを感じたことはないですね。だから、今までソールを変えようとか、違うシューズやソールを試そうとか、考えたことはありません。つまり、ソールを単独で意識する必要がないくらいヴィブラムのソールの性能は間違いないものだと思いますし、それに頼っているということだと思います。
野口啓代(のぐち あきよ)
プロフリークライマー 小学5年生の時に家族旅行先のグアムでフリークライミングに出会う。クライミングを初めてわずか1年で全日本ユースを制覇、その後数々の国内外の大会で輝かしい成績を残し、2008年には日本人としてボルダー ワールドカップで初優勝、翌2009年には年間総合優勝、その快挙を2010年、2014年、2015年と4度獲得し、ワールドカップ優勝も通算21勝を数える。 2018年にはコンバインドジャパンカップ、アジア競技大会で金メダル。2019年世界選手権で2位。自身の集大成、そして競技人生の最後の舞台となった東京2020大会では銅メダルを獲得。 2022年5月、自身の活動基盤となるAkiyo's Companyを設立。 今後は自身の経験をもとにクライミングの普及に尽力し、また「Mind Control」(8c+)、「The Mandara」(V12)を凌駕するような外岩の活動も積極的に行う。
スポーツクライミングにとって重要な道具。時代に合わせて進化していると感じます。ヴィブラム「XS GRIP2」になったのも必然です。
スポーツクライミングの世界でも課題に「流行」があるという。その流行に対して、敏感に開発をするのがヴィブラムの力。選手の誰もが信頼するソールの役割を伺っていくと、ヴィブラムのソールが当たり前(つまりデフォルト!)という現状が見えてきました。選手にとってシューズはまさに足の一部だとわかりました。
−−スポーツクライミングの課題にも流行があるとおっしゃっていました。その流行に対してもアウトソールの役割はあると思います。今メインでお使いになっているシューズにはこのヴィブラムの「XS GRIP 2」を採用しています。他の「FIVE TEN」を含めて「粘り系」のような括り方をする感覚はありますか?
野口
他社のゴムも種類は豊富ですが、もともと試したことがないので分からない部分もあります。以前の「XS GRIP」だったのが「XS GRIP 2」になりました。「2」になったことで、時代に合わせて進化していてフリクションも良くなったという印象はあります。アッパーも、ソールもいまどきの課題であったり、大会を意識しています。現行の課題に合わせて開発されているので、その性能の力を借りて自分の力を引き出すためにも最新のシューズが出るとそれを履くようにしています。
−−クライミング複合(コンバインド)のそれぞれの種目でシューズの使い分けはしているのでしょうか?
野口
私は2種類のシューズを使っています。「コブラ」と「スクワマ」の2種類です。「コブラ」をスピード用で履いています。「スクワマ」はボルダーとリードで履いています。(※ともにコンパウンドは「XS GRIP 2」)。スピード、ボルダー、リードで三つ履き分ける選手もいますが、私は2つを使い分けています。
−−なぜこの2足を選んだのですか?履き心地の違いはありますか?
野口
「コブラ」を履き始めた理由はスピード選手の8割か9割……もうほとんどの選手がこれを使っていたからです。だったら、スピード選手と同じシューズを履いてみようと思いました。スピードは繊細に足を使うというよりはパワーを引き出すことが大事です。ですから、踵の部分は一切使いません。足の前側の面しか使わないで、まるで壁の上を走るように登ります。その際の接地面積がちゃんと取れるのが良いですね。スピードは一本登るのに、女子の選手でも世界記録が6.2秒、男子なら世界記録が4.9秒なので、シューズを履いて、登って降りて、脱いで、という脱ぎ履きの回数がすごく多いのです。脱ぎ履きしやすくて軽い、ソールが壁に密着してくれるという点が良いですね。
−−それで必然的にXS GRIP2になったということですね
−−そんなに接地面のレベルで違ってくるのですね。
野口
「スクワマ」はつま先で乗れるようにダウントゥしています。それに比べると「コブラ」はダウントゥしていなくて、使い込んでいるので逆にアップトゥしちゃっています(笑)。
−−つま先の狭い接地面で競技している中で「XS GRIP 2」が合っていたという感じですか?
野口
そうですね。
−−外用のシューズはどうですか?
野口
外用も私は「スクワマ」を履いていますが、場合によっては「ソリューション」を履くかな、という感じですね。
−−ここ10年くらいでシューズはアッパーもソールも進化は目覚ましいものがあると思います。その恩恵というのでしょうか? より難しい課題に挑戦できるようになったとかはありますか?
野口
シューズの進化は本当にすごいと思っています。特に私が「スポルティバ」を履き始めた2008年だったのですが、そのとき「ソリューション」が出たときでした。この「ソリューション」は革命的でしたね。「ソリューション」が履きたくて「スポルティバ」を履き始めたくらいでした。履いてみたら、感動しましたね。
−−最近、革底の靴をヴィブラムに変えたのですが、雨の日のマンホールで滑らなくなって感激しました。そこまでの劇的な変化はないかもしれませんが、10年の間にソールの違いを感じたことはありますか?
野口
クライミングシューズでいうと、昔ほど攻めなくても、つまり小さいサイズのシューズを履かなくても乗れるようになりました。以前はなるべく小さいシューズを履いて親指に圧をかけないと小さなホールドに乗れなかったのですが、シューズのアッパーもソールも性能が上がりました。その進化は素晴らしいです。特に初心者は小さくて足が痛くなってしまうことも多かったのですが、それもなくなりましたね。私も昔よりシューズのサイズは上がっています。今は36なのですが、昔は35ハーフを履いていましたから。そこまで小さくしなくても小さなスタンスも踏めます。「P3システム」と「FAST LACING SYSTEM」が「ソリューション」あたりから開発され、シューズとソールが一体になって、力をつま先に伝えてくれるようになり、力が逃げなくなりました。ダウントゥの形状を保ちながら、X状にホールドしてくれるシューズのつくり方の進化だと思いますね。昔は紐靴じゃないと力が入らないと言われていましたが、今ではほとんどがベルクロかスリッパタイプになりました。シューズの進化のおかげで足の負担も減っていると思います。
−−こうしたハイスペックなギアの進化が別なところにも影響していると感じたことはありますか?
野口
岩場に行くこともあるのですが、川沿いのエリアだと、水に濡れた石の上を歩かないといけないときもあります。濡れた岩場用につくられたものと普通のスニーカーではまったく違います。
−−2024年のパリ2024 夏季オリンピックでの日本勢の活躍はどう見られていますか?
野口
今年の8月から選考レースが始まります。日本人の選手はスピードもボルダー、リードも男女各2人ずつ選ばれます。東京2020オリンピックに向けてスピードを始めた選手も多く、スピードは10年以上の遅れをとっています。ですが、男子選手で世界記録に近い日本記録を出したり、世界に通用する選手が現れています。ボルダー、リードも東京2020オリンピックはメダル2個でしたが、男女合わせて、最大4個のメダルを獲得できる可能性があります。東京より活躍して日本を盛り上げてほしいと思います。
−−少し普段の野口さんの足元に関して質問させてください。普段はどんなシューズでヴィブラムのものも履かれていますか?
野口
このTHE NORTH FACEのシューズはイベントでもインタビューなどでも履きます。脱ぎ履きが楽で、ゆったりとしていているのですが、ソールはヴィブラムで、しっかりしています。性能が高いのでそのままデモンストレーションもできますし、走るのも問題ない、軽くてしっかりしていますね。軽いのは地方のイベントに行くときに便利で、その点も気に入っています。
−−普段履いているシューズのアウトソールを気にされたことはありますか?
野口
普段、そんなに危ないところに行くわけではないですからね(笑)。岩場に行くときには考えますが、普段のジムなどでは気にしたことはありませんね。それでも行く場所と目的によっては考えます。普段からグリップ力のあるシューズを履き慣れているので、なかなか滑るソールのシューズは履けないというのはあると思います。足型が合わないとか、滑りやすいシューズは履けないですね。ですから、きちんと試着して選びます。競技以外で靴擦れができたり、滑って怪我はしたくないですから。
−−ヴィブラムに対してのイメージってどんな感じですか?
野口
自分の履いている靴のソールです(笑)。ヴィブラムのソールで登っているということですよね。クライミングシューズを今までソールとアッパーと分けて考えたことはなかったのですが、スポルティバのソールがヴィブラム、だから愛用しているソールですよね。
−−普段履いているおしゃれな靴にヴィブラムのソールはありますか?
野口
競技のシューズ以外でソールを気にしたことがないので、わかりません(笑)。
取材の後、野口さんはショールームにある、「MEGA GRIP」の水に濡れた岩場での性能の違いや、「ARCTIC GRIP」のソールで氷上での性能を試していただいた。それぞれに性能の高さを実感していただいた貴重な時間でした。
野口啓代(のぐち あきよ) プロフリークライマー 小学5年生の時に家族旅行先のグアムでフリークライミングに出会う。クライミングを初めてわずか1年で全日本ユースを制覇、その後数々の国内外の大会で輝かしい成績を残し、2008年には日本人としてボルダー ワールドカップで初優勝、翌2009年には年間総合優勝、その快挙を2010年、2014年、2015年と4度獲得し、ワールドカップ優勝も通算21勝を数える。2018年にはコンバインドジャパンカップ、アジア競技大会で金メダル。2019年世界選手権で2位。自身の集大成、そして競技人生の最後の舞台となった東京2020大会では銅メダルを獲得。 2022年5月、自身の活動基盤となるAkiyo's Companyを設立。 今後は自身の経験をもとにクライミングの普及に尽力し、また「Mind Control」(8c+)、「The Mandara」(V12)を凌駕するような外岩の活動も積極的に行う。
−−スポーツクライミングの課題にも流行があるとおっしゃっていました。その流行に対してもアウトソールの役割はあると思います。今メインでお使いになっているシューズにはこのヴィブラムの「XS GRIP 2」を採用しています。他の「FIVE TEN」を含めて「粘り系」のような括り方をする感覚はありますか?
野口
他社のゴムも種類は豊富ですが、もともと試したことがないので分からない部分もあります。以前の「XS GRIP」だったのが「XS GRIP 2」になりました。「2」になったことで、時代に合わせて進化していてフリクションも良くなったという印象はあります。アッパーも、ソールもいまどきの課題であったり、大会を意識しています。現行の課題に合わせて開発されているので、その性能の力を借りて自分の力を引き出すためにも最新のシューズが出るとそれを履くようにしています。
−−クライミング複合(コンバインド)のそれぞれの種目でシューズの使い分けはしているのでしょうか?
野口
私は2種類のシューズを使っています。「コブラ」と「スクワマ」の2種類です。「コブラ」をスピード用で履いています。「スクワマ」はボルダーとリードで履いています。(※ともにコンパウンドは「XS GRIP 2」)。スピード、ボルダー、リードで三つ履き分ける選手もいますが、私は2つを使い分けています。
−−なぜこの2足を選んだのですか?履き心地の違いはありますか?
野口
「コブラ」を履き始めた理由はスピード選手の8割か9割……もうほとんどの選手がこれを使っていたからです。だったら、スピード選手と同じシューズを履いてみようと思いました。スピードは繊細に足を使うというよりはパワーを引き出すことが大事です。ですから、踵の部分は一切使いません。足の前側の面しか使わないで、まるで壁の上を走るように登ります。その際の接地面積がちゃんと取れるのが良いですね。スピードは一本登るのに、女子の選手でも世界記録が6.2秒、男子なら世界記録が4.9秒なので、シューズを履いて、登って降りて、脱いで、という脱ぎ履きの回数がすごく多いのです。脱ぎ履きしやすくて軽い、ソールが壁に密着してくれるという点が良いですね。
−−それで必然的にXS GRIP2になったということですね
−−そんなに接地面のレベルで違ってくるのですね。
野口
「スクワマ」はつま先で乗れるようにダウントゥしています。それに比べると「コブラ」はダウントゥしていなくて、使い込んでいるので逆にアップトゥしちゃっています(笑)。
−−つま先の狭い接地面で競技している中で「XS GRIP 2」が合っていたという感じですか?
野口
そうですね。
−−外用のシューズはどうですか?
野口
外用も私は「スクワマ」を履いていますが、場合によっては「ソリューション」を履くかな、という感じですね。
−−ここ10年くらいでシューズはアッパーもソールも進化は目覚ましいものがあると思います。その恩恵というのでしょうか? より難しい課題に挑戦できるようになったとかはありますか?
野口
シューズの進化は本当にすごいと思っています。特に私が「スポルティバ」を履き始めた2008年だったのですが、そのとき「ソリューション」が出たときでした。この「ソリューション」は革命的でしたね。「ソリューション」が履きたくて「スポルティバ」を履き始めたくらいでした。履いてみたら、感動しましたね。
−−最近、革底の靴をヴィブラムに変えたのですが、雨の日のマンホールで滑らなくなって感激しました。そこまでの劇的な変化はないかもしれませんが、10年の間にソールの違いを感じたことはありますか?
野口
クライミングシューズでいうと、昔ほど攻めなくても、つまり小さいサイズのシューズを履かなくても乗れるようになりました。以前はなるべく小さいシューズを履いて親指に圧をかけないと小さなホールドに乗れなかったのですが、シューズのアッパーもソールも性能が上がりました。その進化は素晴らしいです。特に初心者は小さくて足が痛くなってしまうことも多かったのですが、それもなくなりましたね。私も昔よりシューズのサイズは上がっています。今は36なのですが、昔は35ハーフを履いていましたから。そこまで小さくしなくても小さなスタンスも踏めます。「P3システム」と「FAST LACING SYSTEM」が「ソリューション」あたりから開発され、シューズとソールが一体になって、力をつま先に伝えてくれるようになり、力が逃げなくなりました。ダウントゥの形状を保ちながら、X状にホールドしてくれるシューズのつくり方の進化だと思いますね。昔は紐靴じゃないと力が入らないと言われていましたが、今ではほとんどがベルクロかスリッパタイプになりました。シューズの進化のおかげで足の負担も減っていると思います。
−−こうしたハイスペックなギアの進化が別なところにも影響していると感じたことはありますか?
野口
岩場に行くこともあるのですが、川沿いのエリアだと、水に濡れた石の上を歩かないといけないときもあります。濡れた岩場用につくられたものと普通のスニーカーではまったく違います。
−−2024年のパリ2024 夏季オリンピックでの日本勢の活躍はどう見られていますか?
野口
今年の8月から選考レースが始まります。日本人の選手はスピードもボルダー、リードも男女各2人ずつ選ばれます。東京2020オリンピックに向けてスピードを始めた選手も多く、スピードは10年以上の遅れをとっています。ですが、男子選手で世界記録に近い日本記録を出したり、世界に通用する選手が現れています。ボルダー、リードも東京2020オリンピックはメダル2個でしたが、男女合わせて、最大4個のメダルを獲得できる可能性があります。東京より活躍して日本を盛り上げてほしいと思います。
−−少し普段の野口さんの足元に関して質問させてください。普段はどんなシューズでヴィブラムのものも履かれていますか?
野口
このTHE NORTH FACEのシューズはイベントでもインタビューなどでも履きます。脱ぎ履きが楽で、ゆったりとしていているのですが、ソールはヴィブラムで、しっかりしています。性能が高いのでそのままデモンストレーションもできますし、走るのも問題ない、軽くてしっかりしていますね。軽いのは地方のイベントに行くときに便利で、その点も気に入っています。
−−普段履いているシューズのアウトソールを気にされたことはありますか?
野口
普段、そんなに危ないところに行くわけではないですからね(笑)。岩場に行くときには考えますが、普段のジムなどでは気にしたことはありませんね。それでも行く場所と目的によっては考えます。普段からグリップ力のあるシューズを履き慣れているので、なかなか滑るソールのシューズは履けないというのはあると思います。足型が合わないとか、滑りやすいシューズは履けないですね。ですから、きちんと試着して選びます。競技以外で靴擦れができたり、滑って怪我はしたくないですから。
−−ヴィブラムに対してのイメージってどんな感じですか?
野口
自分の履いている靴のソールです(笑)。ヴィブラムのソールで登っているということですよね。クライミングシューズを今までソールとアッパーと分けて考えたことはなかったのですが、スポルティバのソールがヴィブラム、だから愛用しているソールですよね。
−−普段履いているおしゃれな靴にヴィブラムのソールはありますか?
野口
競技のシューズ以外でソールを気にしたことがないので、わかりません(笑)。
取材の後、野口さんはショールームにある、「MEGA GRIP」の水に濡れた岩場での性能の違いや、「ARCTIC GRIP」のソールで氷上での性能を試していただいた。それぞれに性能の高さを実感していただいた貴重な時間でした。
野口啓代(のぐち あきよ) プロフリークライマー 小学5年生の時に家族旅行先のグアムでフリークライミングに出会う。クライミングを初めてわずか1年で全日本ユースを制覇、その後数々の国内外の大会で輝かしい成績を残し、2008年には日本人としてボルダー ワールドカップで初優勝、翌2009年には年間総合優勝、その快挙を2010年、2014年、2015年と4度獲得し、ワールドカップ優勝も通算21勝を数える。2018年にはコンバインドジャパンカップ、アジア競技大会で金メダル。2019年世界選手権で2位。自身の集大成、そして競技人生の最後の舞台となった東京2020大会では銅メダルを獲得。 2022年5月、自身の活動基盤となるAkiyo's Companyを設立。 今後は自身の経験をもとにクライミングの普及に尽力し、また「Mind Control」(8c+)、「The Mandara」(V12)を凌駕するような外岩の活動も積極的に行う。