2013年よりトレイルランニング競技をスタート。その翌年の「ハセツネCUP」にて、驚愕の大会新記録で優勝したことで一躍脚光を浴びた上田瑠偉選手。
そのまま世界を代表する山岳ランナーへと駆け上り、2021年10月にはどのシューズメーカーとも専属契約を結ばない「シューズフリー」になるべく独立。
そんな彼のシューズ選びに迫りました。
−−ヴィブラムの存在を知ったのはいつ頃ですか?
上田
トレイルランニングを始めたのと同時くらいです。
−−これまでにも、陸上などさまざまなスポーツをされてきています。パフォーマンスの向上を考えてシューズ選びをするようになったのはいつ頃からでしょうか?
上田
サッカーをやっていた小・中学校時代は、そこまで深く考えずにフィット感を重視していました。高校(佐久長聖高校)の駅伝部は強豪校だったこともあって、メーカーの方が部員の足型を測って作ってくれるような環境だったんです。そのあたりから、フィット感だけでなくアッパーなど細部についても意識するようになりました。
−−トレイルランニングの世界に入ったことで、シューズに対するこだわりや選び方の視点に変化はありましたか。
上田
大学時代に陸上のサークルに入っていて、10代最後の記念に100kmマラソンに出たんです。その際にコロンビアスポーツウェアジャパンにスカウトしていただいて、トレイルランニングを始めました。
そこで初めてトレイルランニングシューズを見たのですが、最初の感想は「重いな」というものでした。今ほど軽いシューズがなかった時代ですし、陸上も厚底ブームが来る前だったので、これまでと3倍くらい違うイメージでしたね。
でも、初めて履いたシューズはフィット感が良くて、フィット感が良いと重さは気にならないんだという発見もありました。アウトソールの形状まで気にするようになったのは、間違いなくトレイルランニングを始めてからです。
−−近年はトレイルランニングだけでなく、スカイランニングという競技にも出場されています。シューズ選びに関するさらなるこだわりを伺う前に、まずはふたつの競技の違いを教えてください。
上田
トレイルという不整地を走るという意味では、スカイランニングもトレイルランニングの一部だと言えます。ただ、フィールドに関してスカイランニングは細かく決められていて3種類あります。
中距離の「SKY(スカイ)」は累積標高差1200m以上・距離20~45km、長距離の「SKYULTRA(スカイウルトラ)」は累積標高差3000m以上・距離50~80km。登り一辺倒の「VERTICAL(バーティカル) 」は斜度平均20%以上・一部は33%以上含むという決まりがあります。山頂までどれだけ早く行けるのかという中から生まれたスポーツでもあり、ピークを踏むことが重要視されているのはトレイルランニングと違う点かと思います。
−−上田選手は傾斜のきついコースに強いと言われていますよね。
上田
そうですね。競技として分け隔てなく出場していますが、標高の高い山、さらには斜度がきつい登りが得意です。
−−得意・不得意には、どういう要素が関わってくるのでしょうか。
上田
陸上である程度速い人は、心肺機能や脚力が備わっているのでトレイルランニングでもそこそこ速いんです。でも、陸上しかやってこなかった人は、下りが苦手ということが多かったりします。
トレイルには根っこや岩などの障害物があって、飛び越えていく技術が必要だったり、一定のリズムでは走れないことが多いわけです。
そうなると、サッカーなどのステップを求められたり横移動があるような球技経験者のほうが得意だったり、下りの度胸やスピード感のあるスキー経験者が有利だったりします。
僕の場合、傾斜のある状況でスピードを上げても、人より疲れにくい身体であることが乳酸値の計測からわかりました。その点では世界を狙えるという結果が、レッドブルの施設で出たんです。
−−持って生まれた能力でも優っていたわけですね。さまざまなレースに出場されている上田選手ですが、新しいシューズを手にしたときはどこから確認するのでしょうか。
上田
まずはすぐに履いてみます。長時間走る競技なので、快適さを優先してフィット感を一番大事にしています。
その次にグリップ。濡れた石の上や木の根っこなどで滑ると転倒する危険があり、ときに命にも関わるので滑りにくいことは大事です。
−−グリップの次はどこを見ますか。
上田
ミッドソールの柔らかさやシューズ全体の重さですね。
僕が主戦場としているのは、2~3kmの距離を登り続けるもの(バーティカル)から、40kmくらいまでの中距離なので、そこでは軽い方がいいかなと思っています。
ただ、軽ければいいというわけではなくて、フィット感も耐久性も大事。190~250g程度のものから選んでいます。
−−2021年10月より、コロンビアスポーツウェアジャパンから独立されてシューズフリーになりました。今ではいろいろなメーカーからシューズの提供があるのではないでしょうか。
上田
そういうこともあります。あとは、スポンサーである『Runtrip(ラントリップ)』というランニングのWebメディアに、気になるシューズを伝えると手配してくれるので、それをラントリップのYouTubeで紹介することもあります。
そのまま世界を代表する山岳ランナーへと駆け上り、2021年10月にはどのシューズメーカーとも専属契約を結ばない「シューズフリー」になるべく独立。
そんな彼のシューズ選びに迫りました。
−−ヴィブラムの存在を知ったのはいつ頃ですか?
上田
トレイルランニングを始めたのと同時くらいです。
−−これまでにも、陸上などさまざまなスポーツをされてきています。パフォーマンスの向上を考えてシューズ選びをするようになったのはいつ頃からでしょうか?
上田
サッカーをやっていた小・中学校時代は、そこまで深く考えずにフィット感を重視していました。高校(佐久長聖高校)の駅伝部は強豪校だったこともあって、メーカーの方が部員の足型を測って作ってくれるような環境だったんです。そのあたりから、フィット感だけでなくアッパーなど細部についても意識するようになりました。
−−トレイルランニングの世界に入ったことで、シューズに対するこだわりや選び方の視点に変化はありましたか。
上田
大学時代に陸上のサークルに入っていて、10代最後の記念に100kmマラソンに出たんです。その際にコロンビアスポーツウェアジャパンにスカウトしていただいて、トレイルランニングを始めました。
そこで初めてトレイルランニングシューズを見たのですが、最初の感想は「重いな」というものでした。今ほど軽いシューズがなかった時代ですし、陸上も厚底ブームが来る前だったので、これまでと3倍くらい違うイメージでしたね。
でも、初めて履いたシューズはフィット感が良くて、フィット感が良いと重さは気にならないんだという発見もありました。アウトソールの形状まで気にするようになったのは、間違いなくトレイルランニングを始めてからです。
−−近年はトレイルランニングだけでなく、スカイランニングという競技にも出場されています。シューズ選びに関するさらなるこだわりを伺う前に、まずはふたつの競技の違いを教えてください。
上田
トレイルという不整地を走るという意味では、スカイランニングもトレイルランニングの一部だと言えます。ただ、フィールドに関してスカイランニングは細かく決められていて3種類あります。
中距離の「SKY(スカイ)」は累積標高差1200m以上・距離20~45km、長距離の「SKYULTRA(スカイウルトラ)」は累積標高差3000m以上・距離50~80km。登り一辺倒の「VERTICAL(バーティカル) 」は斜度平均20%以上・一部は33%以上含むという決まりがあります。山頂までどれだけ早く行けるのかという中から生まれたスポーツでもあり、ピークを踏むことが重要視されているのはトレイルランニングと違う点かと思います。
−−上田選手は傾斜のきついコースに強いと言われていますよね。
上田
そうですね。競技として分け隔てなく出場していますが、標高の高い山、さらには斜度がきつい登りが得意です。
−−得意・不得意には、どういう要素が関わってくるのでしょうか。
上田
陸上である程度速い人は、心肺機能や脚力が備わっているのでトレイルランニングでもそこそこ速いんです。でも、陸上しかやってこなかった人は、下りが苦手ということが多かったりします。
トレイルには根っこや岩などの障害物があって、飛び越えていく技術が必要だったり、一定のリズムでは走れないことが多いわけです。
そうなると、サッカーなどのステップを求められたり横移動があるような球技経験者のほうが得意だったり、下りの度胸やスピード感のあるスキー経験者が有利だったりします。
僕の場合、傾斜のある状況でスピードを上げても、人より疲れにくい身体であることが乳酸値の計測からわかりました。その点では世界を狙えるという結果が、レッドブルの施設で出たんです。
−−持って生まれた能力でも優っていたわけですね。さまざまなレースに出場されている上田選手ですが、新しいシューズを手にしたときはどこから確認するのでしょうか。
上田
まずはすぐに履いてみます。長時間走る競技なので、快適さを優先してフィット感を一番大事にしています。
その次にグリップ。濡れた石の上や木の根っこなどで滑ると転倒する危険があり、ときに命にも関わるので滑りにくいことは大事です。
−−グリップの次はどこを見ますか。
上田
ミッドソールの柔らかさやシューズ全体の重さですね。
僕が主戦場としているのは、2~3kmの距離を登り続けるもの(バーティカル)から、40kmくらいまでの中距離なので、そこでは軽い方がいいかなと思っています。
ただ、軽ければいいというわけではなくて、フィット感も耐久性も大事。190~250g程度のものから選んでいます。
−−2021年10月より、コロンビアスポーツウェアジャパンから独立されてシューズフリーになりました。今ではいろいろなメーカーからシューズの提供があるのではないでしょうか。
上田
そういうこともあります。あとは、スポンサーである『Runtrip(ラントリップ)』というランニングのWebメディアに、気になるシューズを伝えると手配してくれるので、それをラントリップのYouTubeで紹介することもあります。
トレイルランニングからスカイランニングまで、あらゆるレースに出場している上田選手。距離や地形、サーフェスが違うなかで、どのようにシューズを使い分けているのかを聞きました。
−−シューズはどのように使い分けているのでしょう。
上田
ロードランニングでは走るペースやトラックで使い分けたりしますが、山の場合はまず距離で考えます。それによってクッションの具合いを使い分けたり、あとは傾斜ですね。傾斜が急なほどアップダウンも激しくなるので、グリップの強いシューズを選びます。逆に、なだらかなトレイルであれば、そこまでグリップは求めません。
−−その他にも検討する要素はありますか。
上田
あとはサーフェス(路面状況)ですね。乾燥しているのか、泥っぽいのか、岩が多いのかなどです。
−−今回、「MERRELL(メレル)」と「NNormal(ノーマル)」のシューズを持参していただきました。これはどのようなレースで履かれているのでしょう。
上田
MTL SKYFIRE 2(MERRELL)はかなり軽い一方、アッパーの構造が繊細なので、30km以下の距離で使っています。アウトソールにはヴィブラムのメガグリップが使われていて、芝生など草が多い場所でもよくグリップしてくれるので気に入っています。先日もレース前日が雨だったこともあって、グリップを頼りにこのシューズをチョイスしました。こんなふうに、剥き出しのミッドソールの上にヴィブラムを貼っているシューズは初めてだったんですけど。最初は線の細い場所がもげたり、千切れたりしそうなイメージでしたが、そういうことは全くなく、岩場をアグレッシブに攻めても問題なかったです。
−−「NNormal(ノーマル)」の方はいかがですか?
上田
Kjerag(NNormal)もすごく軽くて、自分にとってはメレルより履き心地が良いです。なので、もう少し長距離のときや、練習でよく使っています。これもヴィブラムなので滑りにくいですし、耐久性もあります。メレルの方はラグが深くて地面に刺していく感じですが、こちらはライトベースとメガグリップを複合的に使っていて、全体的に圧をかけてグリップさせる感覚があります。
−−アウトソールのラグの配置やパターンにこだわりはありますか?
上田
細かく配置されていると目詰まりしてしまうことがあるので、離れていたほうが泥離れもよくグリップしやすいというのはありますね。
−−メーカーによってグリップ力の差に違いはあるものでしょうか?
上田
全然違います。シューズメーカーが独自に開発しているもの、ヴィブラムのような専業メーカーのものなどいろいろありますが、モノによってはびっくりするくらい滑るものがあります(笑)。転倒しないように慎重に足を置く必要があったり、余計な心配も出てくるので、一定のグリップ力は必須になってきます。
−−開発している国によって設計思想も違いそうですね。アメリカは乾燥していることが多く、日本の山は雨が多いなどありますから。
上田
それはあるかもしれないですね。僕が独立してシューズフリーになった理由のひとつに、各国のトレイル、フィールド、距離に合ったものを自由に選択したいという気持ちがありました。急峻な山岳地形が多いヨーロッパでは、屈曲性の良い(柔らかい)アメリカ向けのシューズだと足底が伸ばされて、傾斜がきつい場所では足底が痛くなることが結構あったんです。
−−レースの開催地によって違いは大きいわけですね。どれくらいの候補の中から絞って、実際に何足くらい持って遠征に行かれるのでしょうか?
上田
春先に新モデルがいろいろと出るんですけど。そこで6~7足をピックアップして、ある程度履き慣らして、3足くらいに絞っていく感じです。でも、現地に行ったらコース状態が思っていたものと違って、急遽、現地調達したこともあります。もちろん、以前に履いたことのあるモデルですけどね。
−−これまでに数多のシューズを試されているわけですが、ヴィブラムの印象はいかがですか?
上田
どんなフィールドでもしっかりと効いてくれるグリップの良さには信頼を置いています。あと耐久性も高い。「このシューズのソールがヴィブラムだったらいいのに」ということはよくあります。
−−出場する大会はどのように選ばれているのでしょうか?
上田
トレイルランニングやスカイランニングをやっている一番のモチベーションは、見たことのない景色や絶景を観に行きたいというのがあるんです。なので、出たことのないレースに出たいですし、SNSや大会のホームページにある景色から選ぶことも多いです。あとは、アスリートとして結果を出さないといけないので、世界選手権や国際大会など、単純にコンペティションとして強豪選手が集まるところですね。
−−ヴィブラムは、UTMBシリーズの公式サプライヤーになりました。ご興味はありますか?
上田
トレイルランニングを始めた頃は、僕もUTMBに憧れて、そこに向かってやってきました。現在でも一番盛り上がっている大会ですし、今ではUTMBシリーズとして世界各国でおこなわれています。景色も綺麗だし、運営もしっかりしているところが多いので気にはなります。
ただ、来年に関してはUTMB(モンブラン)の翌週にスカイランニングの世界選手権があるので、難しい判断にはなってしまいますね。でも、UTMBシリーズに関しては出場したことのないレースも多いので、選ぶ指標にはなると思います。
−−今後、ヴィブラムに期待することはありますか。
上田
ヴィブラムの契約アスリートは、自分の好きなシューズにヴィブラムのアウトソールを貼ることができるので、そこは憧れるんですよ。ナイキのヴェイパーフライにヴィブラムを付けている選手がいて、「めちゃくちゃいいじゃん!」と思ったり。
−−実は、UTMBシリーズの公式サプライヤーになったことで、そういうアクティビティの提供が始まっているんです。リペア工房になっているトラックが会場にやってきて、自分の靴をヴィブラムのソールに替えることもできますよ。
上田
そうなんですか! もうやっているんですね。それが叶うとなれば、僕からの要望はもうないです(笑)
−−是非、ヴィブラムのソールを付けたオリジナルのシューズを試してみてください。本日はありがとうございました。
上田瑠偉(うえだ るい)
山岳ランナー
1993年10月3日生まれ、⻑野県大町市出身。駅伝の名門である佐久⻑聖高校卒、早稲田大学卒。
過去10年間の戦績:国内72戦52勝(勝率 72.2%)、大会新20回、国際大会優勝回数8回。
2019年「Skyrunner World Series」にてアジア人初の年間王者。2021 年「スカイランニング世界選手権」にてVK種目とCOMBINED種目で金メダル。
2021年10月、新しいアスリート像の確立を目指すため独立し、株式会社Mountain Frontierを設立。
2022年、オリジナルD2Cギアブランド『Ruy』を発表。富士山一筆書き「ONE STROKE」でギネス世界記録達成。
スカイランニング世界選手権にてCOMBINED(VK+SKY)2位。
−−シューズはどのように使い分けているのでしょう。
上田
ロードランニングでは走るペースやトラックで使い分けたりしますが、山の場合はまず距離で考えます。それによってクッションの具合いを使い分けたり、あとは傾斜ですね。傾斜が急なほどアップダウンも激しくなるので、グリップの強いシューズを選びます。逆に、なだらかなトレイルであれば、そこまでグリップは求めません。
−−その他にも検討する要素はありますか。
上田
あとはサーフェス(路面状況)ですね。乾燥しているのか、泥っぽいのか、岩が多いのかなどです。
−−今回、「MERRELL(メレル)」と「NNormal(ノーマル)」のシューズを持参していただきました。これはどのようなレースで履かれているのでしょう。
上田
MTL SKYFIRE 2(MERRELL)はかなり軽い一方、アッパーの構造が繊細なので、30km以下の距離で使っています。アウトソールにはヴィブラムのメガグリップが使われていて、芝生など草が多い場所でもよくグリップしてくれるので気に入っています。先日もレース前日が雨だったこともあって、グリップを頼りにこのシューズをチョイスしました。こんなふうに、剥き出しのミッドソールの上にヴィブラムを貼っているシューズは初めてだったんですけど。最初は線の細い場所がもげたり、千切れたりしそうなイメージでしたが、そういうことは全くなく、岩場をアグレッシブに攻めても問題なかったです。
−−「NNormal(ノーマル)」の方はいかがですか?
上田
Kjerag(NNormal)もすごく軽くて、自分にとってはメレルより履き心地が良いです。なので、もう少し長距離のときや、練習でよく使っています。これもヴィブラムなので滑りにくいですし、耐久性もあります。メレルの方はラグが深くて地面に刺していく感じですが、こちらはライトベースとメガグリップを複合的に使っていて、全体的に圧をかけてグリップさせる感覚があります。
−−アウトソールのラグの配置やパターンにこだわりはありますか?
上田
細かく配置されていると目詰まりしてしまうことがあるので、離れていたほうが泥離れもよくグリップしやすいというのはありますね。
−−メーカーによってグリップ力の差に違いはあるものでしょうか?
上田
全然違います。シューズメーカーが独自に開発しているもの、ヴィブラムのような専業メーカーのものなどいろいろありますが、モノによってはびっくりするくらい滑るものがあります(笑)。転倒しないように慎重に足を置く必要があったり、余計な心配も出てくるので、一定のグリップ力は必須になってきます。
−−開発している国によって設計思想も違いそうですね。アメリカは乾燥していることが多く、日本の山は雨が多いなどありますから。
上田
それはあるかもしれないですね。僕が独立してシューズフリーになった理由のひとつに、各国のトレイル、フィールド、距離に合ったものを自由に選択したいという気持ちがありました。急峻な山岳地形が多いヨーロッパでは、屈曲性の良い(柔らかい)アメリカ向けのシューズだと足底が伸ばされて、傾斜がきつい場所では足底が痛くなることが結構あったんです。
−−レースの開催地によって違いは大きいわけですね。どれくらいの候補の中から絞って、実際に何足くらい持って遠征に行かれるのでしょうか?
上田
春先に新モデルがいろいろと出るんですけど。そこで6~7足をピックアップして、ある程度履き慣らして、3足くらいに絞っていく感じです。でも、現地に行ったらコース状態が思っていたものと違って、急遽、現地調達したこともあります。もちろん、以前に履いたことのあるモデルですけどね。
−−これまでに数多のシューズを試されているわけですが、ヴィブラムの印象はいかがですか?
上田
どんなフィールドでもしっかりと効いてくれるグリップの良さには信頼を置いています。あと耐久性も高い。「このシューズのソールがヴィブラムだったらいいのに」ということはよくあります。
−−出場する大会はどのように選ばれているのでしょうか?
上田
トレイルランニングやスカイランニングをやっている一番のモチベーションは、見たことのない景色や絶景を観に行きたいというのがあるんです。なので、出たことのないレースに出たいですし、SNSや大会のホームページにある景色から選ぶことも多いです。あとは、アスリートとして結果を出さないといけないので、世界選手権や国際大会など、単純にコンペティションとして強豪選手が集まるところですね。
−−ヴィブラムは、UTMBシリーズの公式サプライヤーになりました。ご興味はありますか?
上田
トレイルランニングを始めた頃は、僕もUTMBに憧れて、そこに向かってやってきました。現在でも一番盛り上がっている大会ですし、今ではUTMBシリーズとして世界各国でおこなわれています。景色も綺麗だし、運営もしっかりしているところが多いので気にはなります。
ただ、来年に関してはUTMB(モンブラン)の翌週にスカイランニングの世界選手権があるので、難しい判断にはなってしまいますね。でも、UTMBシリーズに関しては出場したことのないレースも多いので、選ぶ指標にはなると思います。
−−今後、ヴィブラムに期待することはありますか。
上田
ヴィブラムの契約アスリートは、自分の好きなシューズにヴィブラムのアウトソールを貼ることができるので、そこは憧れるんですよ。ナイキのヴェイパーフライにヴィブラムを付けている選手がいて、「めちゃくちゃいいじゃん!」と思ったり。
−−実は、UTMBシリーズの公式サプライヤーになったことで、そういうアクティビティの提供が始まっているんです。リペア工房になっているトラックが会場にやってきて、自分の靴をヴィブラムのソールに替えることもできますよ。
上田
そうなんですか! もうやっているんですね。それが叶うとなれば、僕からの要望はもうないです(笑)
−−是非、ヴィブラムのソールを付けたオリジナルのシューズを試してみてください。本日はありがとうございました。
上田瑠偉(うえだ るい)
山岳ランナー
1993年10月3日生まれ、⻑野県大町市出身。駅伝の名門である佐久⻑聖高校卒、早稲田大学卒。
過去10年間の戦績:国内72戦52勝(勝率 72.2%)、大会新20回、国際大会優勝回数8回。
2019年「Skyrunner World Series」にてアジア人初の年間王者。2021 年「スカイランニング世界選手権」にてVK種目とCOMBINED種目で金メダル。
2021年10月、新しいアスリート像の確立を目指すため独立し、株式会社Mountain Frontierを設立。
2022年、オリジナルD2Cギアブランド『Ruy』を発表。富士山一筆書き「ONE STROKE」でギネス世界記録達成。
スカイランニング世界選手権にてCOMBINED(VK+SKY)2位。